セカンドキャリア問題の本質である「アイデンティティの喪失」を具体的に解決する方法

セカンドキャリア問題の本質である「アイデンティティの喪失」を具体的に解決する方法

こんにちは。坂口友亮です。

アスリートのセカンドキャリア問題の本質は何でしょうか。

それは「アイデンティティの喪失(そうしつ)」です。

為末「人生のほとんどを競技に費やしてきたため、『選手でなくなること』の喪失感はすごく大きいですね」

「アスリートは競技でしか『輝く自分』を表現できないと思っています。

そのため、競技に執着して、辞め時を見失うこともある。

アスリートの引退は、キャリアの問題ではなく、アイデンティティの問題なのです」

為末大に聞く「アスリートのセカンドキャリア」のつくり方

為末大さんが「アスリートは競技でしか『輝く自分』を表現できないと思っています」と言うように、これは単なる思い込みです。

原因が思い込みにあるなら、それを外せば問題は解決に向かいます。

以下、具体的な方法を説明します。

アイデンティティとは

「アイデンティティ」の意味を辞書で引くと「自我同一性」や「自分らしさ」と出てきます。

「自我同一性」は難しくて意味がわかりませんし、「自分らしさ」もフワッとしていて具体性に欠けます。

ここでは「時間や環境に左右されず、自分の価値を表現できるもの」と考えれば、わかりやすくなります。

例えば「日本の国籍を持っている」というのがアイデンティティの一例です。

もちろん、価値を感じるかどうかは人それぞれなので、全ての「日本の国籍を持っている人」がそれをアイデンティティにしているわけではありません。

そして、アスリートのアイデンティティの問題とは

「競技しか自分の価値を表現できるものがない」

という思い込みから、

「競技が出来ない自分には価値がない」

へと悪化し、

「これから先どう生きればいいかわからない」

と漠然とした不安を抱くことにあります。

なので、引退したアスリートにただ仕事を紹介しても問題は解決しません。

「スポーツで磨いた精神と頭脳を活かして社会に貢献する」という話も聞きますが、具体性に欠けていて現実味がありません。

では、どうすればいいのか。

まずは「競技=自分の価値」という思い込みを外す必要があります。

STEP1. 問題を理解して、思い込みを外す

サッカーで例えてみます。

「競技=自分の価値」だと思い込んでいる選手がいるとしましょう。

もう少し詳しく言うと「得意なこと=サッカー=自分の価値」という状態です。

この思い込みを外したい。

そのためにはまず「得意なこと」の正しいイメージを知る必要があります。

「得意なこと」の正しいイメージとは「氷山」のようなものです。

誤ったイメージを持っていると、引退後にどうなるか。

こちらのイラストを見てください。

海面に出ている氷山の一部が「得意なこと=サッカー」を表しています。

氷山に例えた意味は、のちほど説明します。まずは読み進めてください。

そして「得意なこと=サッカー=自分の価値」だと思っている選手が引退すると、こうなります。

引退してサッカーを辞めてしまったので、そこにくっついていた「自分の価値」まで消えてしました。

「自分の価値」だと思ってたものが根こそぎ無くなるんですから、喪失感に襲われるのは当たり前です。

しかし、この認識は間違っています。なぜなら「得意なこと」の表面しか見ていないからです。

「表面に現れていることは全体のほんの一部に過ぎない」ことの例えとして「氷山の一角」なんて言い回しがありますが、まさに「得意なこと」も同じ構造をしています。

「得意なこと」は「意識してできること(スキル・知識)」と「無意識にできること(自然とできる思考・行動)」の2つから成り立っています。


脳科学の世界でも「意識」と「無意識」の割合について、「意識」の割合は10%以下で、90%以上を「無意識」が占めていると言われています。

普段の私たちは、自分で考えて行動し、自分で決断していると思い込んでいます。

しかし、無意識で動いて、行動して、とっさに発言してしまうことが90%以上なんです。

アスリートの視野が狭くなる理由

なので「得意なこと=自分の価値」という誤った認識を持つのはアスリートだけでなく、誰もがはまるワナなのです。

しかし、アスリートは長年の競技生活で「競技に集中すること」と「選手としての自分に執着すること」の区別ができず、余計に誤ったイメージを持ちやすくなります。

そして、世間にも「競技に集中することは素晴らしい」という風潮があるせいで、余計このワナにはまりやすい…という面もあります。

そして多くの場合、引退してからの人生の方がずっと長いという事実に、引退して始めて向き合うことになります。

普通は「得意なこと」と言うと、具体的なスキルや知識を思い浮かべます。

歌が上手い、料理が上手い、足が早い、サッカーが上手い…

しかし、同じようにサッカーが上手い選手でも、細かく見ていくと、一人一人得意なことが違います。

指示を出すのが得意な選手、周りの選手のモチベーションを高めるのが上手い選手、深く考えてプレーできる選手、ひらめきが冴えている選手…

表面的なスキル・知識は、環境が変わると使えなくなります。

ドリブルがいくら上手くても、サッカー以外では役に立ちません。

しかし「指示を出す」「周りの人のモチベーションを高める」「深く考える」「ひらめきが冴えている」という「自然とできる思考・行動」は、他の分野でも応用できます。

もし。もしですよ。

「自然とできる思考・行動」の中から「社会的な成功につながるもの」だけを見つけ出すことが出来たらいいと思いませんか?

そんな都合のいい方法があったら苦労しないわ…と思うかもしれませんが、

あります。

それがストレングス・ファインダーです。

STEP2. ストレングス・ファインダーで社会的成功につながる「強み」を発見する

ストレングス・ファインダーとは、「人間の強み」を研究するアメリカのGallup(ギャラップ)社が開発した「社会的に成功するための強み(ストレングス)」を発見するための診断ツールです。

Gallup社は、世界中の様々な業種の成功者200万人にインタビューを行い、成功者がそなえている34種類の「資質」を発見しました。

177問の質問に答えることで、自分を特徴づける資質のランキングを知ることが出来ます。

2020年4月現在、全世界で2300万人以上がストレングスファインダーを活用した診断を受けていて、個人の才能の開発や、企業内でのマネジメントなど様々な用途に使われています。

ストレングス・ファインダーは、よくある性格診断とは違い、信憑性が高く、実用性に優れています。

例えば、血液型診断で「A型は真面目」と言われても、根拠もありませんし、仕事にどう活かせばいいかもわかりません。

一方、ストレングス・ファインダーは世界中の成功者200万人から集めたデータを分析して作られたものであり、34種類の資質は、全てが社会的な成功につながる「強み」として使えるものです。

ストレングス・ファインダーの受け方

ストレングスファインダーの受け方は、こちらの2つのサイトがわかりやすくオススメです。

ストレングスファインダー®︎の受け方・診断方法−ハートラボ・ジャパン

ストレングス・ファインダーを受けるだけで自分の軸が定まって、次のキャリアが見えてくる人もいると思います。

しかし、それだけでは不十分な場合がほとんどです。

なぜなら、ストレングス・ファインダーで明らかになる資質は「強みの元」となるものだからです。

資質を強みにするには、資質の特徴(自分が自然とできる思考・行動)を理解し、それを磨き上げる必要があります。


STEP3. 一生使える「自分の勝ちパターン」を見つける

ストレングス・ファインダーで自分の資質が明らかになったら、次はそれを強みにするために「自分の勝ちパターン」を見つける必要があります。

具体的な方法については、こちらの記事にまとめています。


引退後にやりたいことが見つかる選手と、見つからない選手の違い

「競技」が自分の価値だと思っている選手は、引退すると何をすればいいか、わからなくなります。

「強み」が自分の価値だと思っている選手は、引退後も新しい分野を見つけることができます。

両者の違いは「アイデンティティ(自分の価値を表現するもの)の根拠を、自分の外側に持っているか、内側に持っているか」です。

自分の外側にあるものは、自分ではコントロールできません。

一方、自分の内側にあるものは、自分でコントロールできます。

具体的なスキルや知識は、一見役に立ちそうに見えますが、自分でコントロールできないという危うさもあります。

スキルや知識をアイデンティティのよりどころにしている人は、時代の変化に対応できません。

「自分の強み」を理解している人は、時代の変化に合わせて最適なスキル・知識を学び、役立てることができます。

スキル・知識は、あくまで「自分の強み」を発揮するための手段でしかありません。

まずは自分の視野が狭くなっていることに気づき、自分の価値に対する認識をアップデートし、自分の強みを理解する。

これがセカンドキャリア問題を解決するための第一歩です。