セカンドキャリア問題の本質である「アイデンティティの喪失」を具体的に解決する方法
- 2020.04.18
- セカンドキャリア

こんにちは。坂口友亮です。
アスリートのセカンドキャリア問題の本質は何でしょうか。
それは「アイデンティティの喪失(そうしつ)」です。
為末「人生のほとんどを競技に費やしてきたため、『選手でなくなること』の喪失感はすごく大きいですね」
「アスリートは競技でしか『輝く自分』を表現できないと思っています。
そのため、競技に執着して、辞め時を見失うこともある。
アスリートの引退は、キャリアの問題ではなく、アイデンティティの問題なのです」
為末大に聞く「アスリートのセカンドキャリア」のつくり方
為末大さんが「アスリートは競技でしか『輝く自分』を表現できないと思っています」と言うように、これは単なる思い込みです。
原因が思い込みにあるなら、それを外せば問題は解決に向かいます。
以下、具体的な方法を説明します。
アイデンティティとは
「アイデンティティ」の意味を辞書で引くと「自我同一性」や「自分らしさ」と出てきます。
「自我同一性」は難しくて意味がわかりませんし、「自分らしさ」もフワッとしていて具体性に欠けます。
ここでは「時間や環境に左右されず、自分の価値を表現できるもの」と考えれば、わかりやすくなります。
例えば「日本の国籍を持っている」というのがアイデンティティの一例です。
もちろん、価値を感じるかどうかは人それぞれなので、全ての「日本の国籍を持っている人」がそれをアイデンティティにしているわけではありません。
そして、アスリートのアイデンティティの問題とは
「競技しか自分の価値を表現できるものがない」
という思い込みから、
「競技が出来ない自分には価値がない」
へと悪化し、
「これから先どう生きればいいかわからない」
と漠然とした不安を抱くことにあります。
なので、引退したアスリートにただ仕事を紹介しても問題は解決しません。
「スポーツで磨いた精神と頭脳を活かして社会に貢献する」という話も聞きますが、具体性に欠けていて現実味がありません。
では、どうすればいいのか。
まずは「競技=自分の価値」という思い込みを外す必要があります。
STEP1. 問題を理解して、思い込みを外す
サッカーで例えてみます。
「競技=自分の価値」だと思い込んでいる選手がいるとしましょう。
もう少し詳しく言うと「得意なこと=サッカー=自分の価値」という状態です。
この思い込みを外したい。
そのためにはまず「得意なこと」の正しいイメージを知る必要があります。
「得意なこと」の正しいイメージとは「氷山」のようなものです。
誤ったイメージを持っていると、引退後にどうなるか。
こちらのイラストを見てください。

海面に出ている氷山の一部が「得意なこと=サッカー」を表しています。
氷山に例えた意味は、のちほど説明します。まずは読み進めてください。
そして「得意なこと=サッカー=自分の価値」だと思っている選手が引退すると、こうなります。

引退してサッカーを辞めてしまったので、そこにくっついていた「自分の価値」まで消えてしました。
「自分の価値」だと思ってたものが根こそぎ無くなるんですから、喪失感に襲われるのは当たり前です。
しかし、この認識は間違っています。なぜなら「得意なこと」の表面しか見ていないからです。
「表面に現れていることは全体のほんの一部に過ぎない」ことの例えとして「氷山の一角」なんて言い回しがありますが、まさに「得意なこと」も同じ構造をしています。
「得意なこと」は「意識してできること(スキル・知識)」と「無意識にできること(自然とできる思考・行動)」の2つから成り立っています。

脳科学の世界でも「意識」と「無意識」の割合について、「意識」の割合は10%以下で、90%以上を「無意識」が占めていると言われています。
普段の私たちは、自分で考えて行動し、自分で決断していると思い込んでいます。
しかし、無意識で動いて、行動して、とっさに発言してしまうことが90%以上なんです。
アスリートの視野が狭くなる理由
なので「得意なこと=自分の価値」という誤った認識を持つのはアスリートだけでなく、誰もがはまるワナなのです。
しかし、アスリートは長年の競技生活で「競技に集中すること」と「選手としての自分に執着すること」の区別ができず、余計に誤ったイメージを持ちやすくなります。
そして、世間にも「競技に集中することは素晴らしい」という風潮があるせいで、余計このワナにはまりやすい…という面もあります。
そして多くの場合、引退してからの人生の方がずっと長いという事実に、引退して始めて向き合うことになります。
普通は「得意なこと」と言うと、具体的なスキルや知識を思い浮かべます。
歌が上手い、料理が上手い、足が早い、サッカーが上手い…
しかし、同じようにサッカーが上手い選手でも、細かく見ていくと、一人一人得意なことが違います。
指示を出すのが得意な選手、周りの選手のモチベーションを高めるのが上手い選手、深く考えてプレーできる選手、ひらめきが冴えている選手…
表面的なスキル・知識は、環境が変わると使えなくなります。
ドリブルがいくら上手くても、サッカー以外では役に立ちません。
しかし「指示を出す」「周りの人のモチベーションを高める」「深く考える」「ひらめきが冴えている」という「自然とできる思考・行動」は、他の分野でも応用できます。
もし。もしですよ。
「自然とできる思考・行動」の中から「社会的な成功につながるもの」だけを見つけ出すことが出来たらいいと思いませんか?
そんな都合のいい方法があったら苦労しないわ…と思うかもしれませんが、
あります。
それがストレングス・ファインダーです。
STEP2. ストレングス・ファインダーで社会的成功につながる「強み」を発見する
ストレングス・ファインダーとは、「人間の強み」を研究するアメリカのGallup(ギャラップ)社が開発した「社会的に成功するための強み(ストレングス)」を発見するための診断ツールです。
Gallup社は、世界中の様々な業種の成功者200万人にインタビューを行い、成功者がそなえている34種類の「資質」を発見しました。
177問の質問に答えることで、自分を特徴づける資質のランキングを知ることが出来ます。
2020年4月現在、全世界で2300万人以上がストレングスファインダーを活用した診断を受けていて、個人の才能の開発や、企業内でのマネジメントなど様々な用途に使われています。

ストレングス・ファインダーは、よくある性格診断とは違い、信憑性が高く、実用性に優れています。
例えば、血液型診断で「A型は真面目」と言われても、根拠もありませんし、仕事にどう活かせばいいかもわかりません。
一方、ストレングス・ファインダーは世界中の成功者200万人から集めたデータを分析して作られたものであり、34種類の資質は、全てが社会的な成功につながる「強み」として使えるものです。
ストレングス・ファインダーの受け方
ストレングスファインダーの受け方は、こちらの2つのサイトがわかりやすくオススメです。
ストレングスファインダー®︎の受け方・診断方法−ハートラボ・ジャパン
ストレングス・ファインダーを受けるだけで自分の軸が定まって、次のキャリアが見えてくる人もいると思います。
しかし、それだけでは不十分な場合がほとんどです。
なぜなら、ストレングス・ファインダーで明らかになる資質は「強みの元」となるものだからです。
資質を強みにするには、資質の特徴(自分が自然とできる思考・行動)を理解し、それを磨き上げる必要があります。
STEP3. 一生使える「自分の勝ちパターン」を見つける
ストレングス・ファインダーで自分の資質が明らかになったら、次はそれを強みにするために「自分の勝ちパターン」を見つける必要があります。
具体的な方法については、こちらの記事にまとめています。
引退後にやりたいことが見つかる選手と、見つからない選手の違い
「競技」が自分の価値だと思っている選手は、引退すると何をすればいいか、わからなくなります。
「強み」が自分の価値だと思っている選手は、引退後も新しい分野を見つけることができます。
両者の違いは「アイデンティティ(自分の価値を表現するもの)の根拠を、自分の外側に持っているか、内側に持っているか」です。
自分の外側にあるものは、自分ではコントロールできません。
一方、自分の内側にあるものは、自分でコントロールできます。
具体的なスキルや知識は、一見役に立ちそうに見えますが、自分でコントロールできないという危うさもあります。
スキルや知識をアイデンティティのよりどころにしている人は、時代の変化に対応できません。
「自分の強み」を理解している人は、時代の変化に合わせて最適なスキル・知識を学び、役立てることができます。
スキル・知識は、あくまで「自分の強み」を発揮するための手段でしかありません。
まずは自分の視野が狭くなっていることに気づき、自分の価値に対する認識をアップデートし、自分の強みを理解する。
これがセカンドキャリア問題を解決するための第一歩です。
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